


1999年 8月6日
プロローグ
朝の5時。
すっかり夜も明けて、でもちょっとだけ赤みの残る空の色。
すでに気温は高く、蒸し暑い。
どこからか微かに聞こえてくる、ミンミンゼミとヒグラシの混声合唱。山手線を降りて階段をかけ上がり、常磐線のホームへと移動する。ここは東京の日暮里駅。電車はまだ来ていない。間に合って良かった(^-^;)。
ウキウキと不安と体の疲れが入り交じった、不思議な感覚。ほどなくして、いわき行きの各駅停車がやってきた。いよいよ3年ぶりの一人旅だぁ!
眠りたいけど眠れない・・・
1本目の列車 321M
日暮里5:13-いわき8:33
乗車時間 3時間20分
またしてもムーンライト越後の指定席が取れなくて、いや正確にいうと出発日が直前に変更となってしまったので、北海道まで乗り継いでゆく列車は3年前とほぼ同じ。クロスシートに腰をおろして、ついでに足も伸ばしてしまう。右側の窓から、キョーレツな朝日が差し込んでくる。たまらずに目をつぶったけれど、まぶたを貫通してまでチカチカと網膜を刺激してくる。徹夜明けの疲れた目にはきついなぁ。自分の意志とは無関係に涙まで流れ出したので、ブラインドを3分の2ほど降ろす。
この2/3っていうのがビミョーな心理状態を表している。どうしても車窓の景色に未練があるから・・・ビジネスのための、ワクワクしない移動だったら、たぶん100%閉めきっている事でしょう(^-^;)。後頭部がどんよりと重い。つまり眠たいのだけれど、いくら目をつぶっていても全く眠れない。昨夜、コーヒーを飲み過ぎたからだ。眠気覚ましのつもりだったが、いまだに効きまくっている。
目が“トロン”としてきているのが自分でもわかるんだけど、なんとなく落ち着かなくて、苦しいような妙な感じだ。最近、カフェインに弱くなった。学生の頃なんて、コーヒーのおかわりだけで一日中ファミレスに居られたのになー(^_^;)。車内が空いているのを良いことに、あぐらをかく姿勢でシートに座り直し、膝下にあるツボ『足の千里』と『陽陵泉』、足の裏にある『湧泉』を指圧する。この3つのツボは、僕のお気に入り。足のダルさが取れるだけでなく、体中がすぅーっと軽くなるような感じがする。旅行しているようなときにはすごく良い。でも以前「モミカエシ」が来てしまい、四六時中指圧していないと気が済まないときもあった(^_^;)。
って感じで揉み続けること数分後、今度は尿意が襲ってきた(笑)。車内に挙動不審なオジサンが一人いたので、近くに座っている中年女性に一声かけてトイレへ向かう。カフェインには利尿作用もあるのだった(笑)。
701系は大嫌いだぁ!
いわき駅では、ちょっとだけ外の空気を吸いに改札の外へ出てみる。キヨスクでウェットティッシュを買い、顔を拭いてさっぱりする。もう一つさっぱりしておきたいことがあった。どうもここ数日間、お腹がすっきりしないのだ(^_^;)。こんな時、油断してはならない。今回の旅は(も)、すべて列車の乗り継ぎである。とくに北海道までは、一本でも乗り遅れたら大変だ。予定外の途中下車などできる余裕はない。
もし・・・よりによって・・・混雑して身動きできぬような車内、または列車の乗り換え等のタイミングで、お腹がアクティブな状態(笑)になってしまったら・・・なんて思うと不安でしょーがないのだ。おちつかないのだ。背中に重い荷物を背負っている事も、ソノ時にはかなりの負担となるだろうし。
列車の待ち合わせ時間が約45分とあるので、イチかバチか勝負を挑んでみることにした(笑)。・・・やがて自分自身との激しい戦いをした結果、「とりあえずは安泰だ」と自信を持って言えるほどの成果を導き出す事に、ワレ成功セリ(なんだかなー^-^;)。
そして今回の旅ではもう一つ、懸念すべきものを背負っていた。時限式歯痛爆弾だ(笑)。奥歯の詰めていた所が、出発直前に取れてしまったのだ。とりあえず今のところは大丈夫だが、疲労などが起爆装置となり、いつどこで炸裂してもおかしくない状態。いちおうバファリンを持ってきていたので、閾値が変動する前にごまかせば、なんとかなるだろう(^^;)。最悪に備え、保険証も持ってきた。
2本目の列車 681M
いわき9:18-原ノ町10:32
乗車時間 1時間14分ホームへ降りると、見覚えのあるステンレス製の車両が止まっていた。
ぅああぁぁぁ!なんてこった〜!全席ロングシートの701系だ・・・。こんなに早くお出ましになっちゃうとは!。
実は前回の旅でも701系には乗ったのだけれど、僕の記憶(&記録)にはあえて一切書かなかった。長く乗るには疲れるし、座席定員が少ないからあっというまに混雑するし、景色もゆっくり見ることが出来ないし。しかも前回は常磐線では遭遇しなかったはずだ。ああ、先が思いやられる(そして先々苦労することになる^^;)。僕は進行方向右手に座っている。でも、車窓は頭の後ろ側。紫外線や熱をカットしていると思われる窓ガラスだが、それでも首筋が太陽に照らされっぱなしで暑い。後ろを振り向けば海なのかもしれないが、見る気がおきない。文庫本やヘッドフォンステレオは網棚に乗せたリュックの中にある。取り出すのもめんどうだ。なにをするでもなくポケっとしていると、ようやく本物の睡魔が誘いをかけてきた。
ひたすら乗り換え、乗り続ける
3本目の列車 243M
原ノ町10:49-仙台12:10
乗車時間 1時間21分
原ノ町で乗り換え。やったぁ、こんどはクロスシートだ(455系かなにか)。進行方向を向きながら、足を前に伸ばして座れるし、景色も堪能できるぞ(^^)。乗り換えの階段がホーム後方にあるせいで、後ろの車両はほぼ満席。でも車内通路を通り、前を進んでゆくと、どんどん人が減ってくる。何両か目にクーラーの効いていない車両があった。そのせいで人はまばら。海側の空いている席に座りこむ。空腹だったので、座席に荷物を置いたままホームに出て、かけうどんを食べる。走り出すと、徐々に空調も効いてきた。時折海が顔を覗かせる。海霧が発生していて、海岸線沿いはけむっている。仙台に近づくにつれ、車内は徐々に混み合いだし、足を伸ばせる状態ではなくなってきた。
仙台駅前は七夕の飾りに彩られていて、ユカタの女性もチラホラといたりする。しかしまー・・・・・・暑い(--;;)。
4本目の列車 535M
仙台12:40-一ノ関14:20
乗車時間 1時間40分次の一ノ関行き電車に乗り換えるため、ホームへ移動。早めに並んで座席を確保・・・・のはずだったが、すでにけっこうな乗車待ちの列。それでも後ろの方は比較的空いていたので、そちらへ並ぶ。なんとか座れるだろうなどと思っていた矢先にアナウンスが。
『一ノ関へは、前より2両までとなります。』
小牛田駅で切り離すらしい。2両+2両編成の701系が、ゆっくりと入線してきた。脱力〜(^^;)。右手に本を持ち、左手で吊革をつかまりながら電車にゆられる。いつの間にか通勤しているような錯覚に陥ってしまう僕。車内の造りも似ているしね(^^;)。でも、若干色の付いた窓ガラスの向こう側には、ビルではなくて夏の光を浴びた田んぼが広がっている。本を読みながらも、時々は車窓の景色を眺めたりしてすごす。
5本目の列車 1543M
一ノ関15:00-盛岡16:31
乗車時間 1時間31分ホームのベンチに座り、盛岡行きが入線してくるのを待つ。客の中には、一見して北を目指す青春18キップ利用客だと判る人が多い。日焼けした肌、もう少しで塩をふきそうなTシャツ、サンダル、短パンにねじり鉢巻き(^^;)、そしてブショウヒゲ・・・ギターを抱えている人までいる(笑)。活気があるのかないのか判らない、夏の表情を見せている島式ホーム。脳裏に突然「カニ族大移動」というフレーズが浮かんできた。(よくわからん^^;)
この先もずっと701系。今度はなんとか座れることが出来た。が、正直言って、東北の50系客車が701系に置き換わってからは、旅の楽しみが半減してしまったなぁ。それにこの車両って、地元の人にメリットがありそうでいて、本当はどうなのだろうか?確かにクーラーが付いたのは良いことだけれども・・・・。
いくら手動でドアの開閉が出来るといっても、両開き3扉じゃ冬は寒く感じるだろうなぁ。ましてやこの辺りでは(新潟あたりと違い)、今までデッキと客室は仕切られていたのが普通だったから、よけいにそれを体感するかもしれない。
ロングシートだと、座れる人の数が少なすぎる。多客期の今は、途中から乗ってきた地元の人もイスに座れず、しぶしぶ荷物を持ちながら、苦しそうに吊革を握って立っている。鉄道の使われ方としては、移動する距離も乗っている時間も、首都圏の通勤電車よりはずぅーっと長いはずなのに。ワンマン運転はいたしかた無いとしても、だからといって、まるで路線バスのように仕立ててしまうのは安直すぎる。このような本線では、始発の駅から終点まで乗り通す人だって多いはずだ。
いろいろとコストの面で厳しいのかもしれないが、運用費削減だけを追求するのではなくて、列車を利用している人たちを、まず第一に考えるような進化(と車両の投入計画)をして欲しいなぁ・・(^_^;)。
・・・なんて思うその一方で、もしかしたら僕の趣味や嗜好等が無意識的に考察(?)へも影響していて、その結果そう思いこんでいるだけであって、実際は地元通勤&通学客にとってみれば、やはり便利、かつ結構気に入られているのでは?。鉄道好きとか、偶にしか利用しない僕みたいなイチゲン旅行客の、好き勝手な捉え方なのでは?とも考えていたりいていた・・・。
いっそのこと、毎日利用している人にアンケートしてみたい(^^;)。6本目の列車 581M(青森行)
盛岡16:50-八戸18:36
乗車時間 1時間48分車両が近代化されるにつれて、鈍行乗り継ぎの旅ならではの醍醐味や“旅情的”なものが希薄となってきたことはさすがに否めない。しかし、「完全に」消えてしまうような事もまた、無いだろう。
3年前と同じように、地元の高校生達はたわいもないお喋りを楽しんでいる。日没間際の、茜色に染まった風景をうつろに眺め、もの思いに耽いるモードへといつの間にか入り込んでいる僕。この時間帯(逢魔が刻ともいう^^;)は、そんなビミョーな気持ちになりやすい。
向かいの席に座っているカップルは、仲むつまじく楽しそうにトランプをしている。自転車をかつぎ込んでいる大学生風の兄さんは、時々何かを思いついたようにノートへ書き込んでいる。その表情や仕草から、事務的な内容をメモしたり、計算等をしているわけでは無いことが判る。「詩」でも書いているのかなぁ・・・。『次の八戸では、26分ほど停車します』
みたいなことを車内アナウンスが告げた。特急待ちらしい。この電車でそのままゆくと、青森到着は20:37分。いっぽう追い越しをするはつかり19号は、青森に20:00ジャストの到着だ。その差37分。たったそれだけの差が重要な意味を持つことに、盛岡あたりで気付いた(もっと早く気づけよな、おれ^_^;)。
車窓が茜色から青紫に変わり、窓ガラスに車内の蛍光灯が映り始めた頃、八戸に停車した。
7本目の列車 1019M(特急はつかり19号)
八戸18:57-青森20:00
乗車時間 1時間03分青森から函館に向けて出発する快速「海峡13号」に乗るか乗らないかで、その後のスケジュールが大きく変わってきてしまう。ここ八戸から青森までの区間だけ特急に乗れば、海峡13号を経て函館発の夜行快速と乗り継ぐ事ができ、朝には札幌へ着くことも可能なのだ。
前回も乗り継ぎを注意深く調べなかったので(^-^;)、似たような金額で急行を利用した(青森-函館間)にもかかわらず、結局函館で朝を迎えてしまった。
この違いは大きいっす。北海道からは、さらに列車の本数が少なくなるので、極力進めるところまで進んでおいた方がいいと考え、特急に乗ってみることにした。しかし青春18キップの宿命で、特急券とは別にその区間の乗車券も買わなければならない。特急を利用することに対して、妙な罪悪感があった(^^;)。
特急に乗り換える僕を見て、仙台あたりから一緒に乗り合わせてきた学生達に、『なんだ、あの人は結局特急に乗るのか。どうせなら最後まで青春18使って旅をしろよ』
なんて言われていそうな感じがする(^^;)。っていうかつまり、僕自身の心がそう叫んでいるのだが(笑)。はつかり19号が止まり、細身の乗車口が開く。そういえば久しぶりに見る、赤とクリーム色のツートーン。国鉄時代の特急色。485系は静かに走り出した。
車掌さんが来たので八戸から乗車したことを告げ、青春18を見せてキップを買おうとしたら、あっ!えっ?車掌さんが僕を見て微笑んでいる!?照れるなぁしかしなぜ?ショートカットして快速ミッドナイトまで乗り継ぐつもりなんだろうとか、やっぱ判るのか(^-^;)?なぜなんだ、教えてくれー、気になるよぉー(^-^;)・・・・・。・・・・・いつの間にか寝てしまったらしい(笑)。睡眠不足で、何となく頭が重い。
青森に着く5分ほど前にデッキへ出て、ドアが開くのを待っていた。
うずくまりながら海を渡る
8本目の列車 3133(快速 海峡13号)
青森20:26-函館22:58
乗車時間 2時間32分青森駅のホームを走る。背中に背負ったリュックがせわしなく上下に揺れ、走りづらいことこの上ないが、座席は早い者勝ちだ。連絡通路からの階段を降り、停車している海峡13号が見えてきた。
「あ。ドラえもん・・・。」(笑)
停まっていたのは、ドラえもん・のび太君・しずかちゃん達のカッティングシートが客車の側面に張り付けられた、別名「ドラえもん海底列車」だった。青函トンネル10周年を記念して企画されたものらしい。
そんなことより、早く座席を確保しなければ。階段に近い最後尾の自由席車両は、外から見てもすぐに判るほど混雑していた。駆け足気味で、ホームの先へと進む。人がまばらな車両が目に入る。でもそこは指定席・・・・。あきらめてきびすをかえし、なにやらドラえもんの人形が置かれている車内へと入る。
座席は全て撤去されていた。多くの人が、リノリウム張りの床へダイレクトに腰を降ろし、出発を待っていた。室内は、子供達が遊ぶプレイルームのような造りになっていて、壁にもキャラクターの絵がいっぱい貼られているが、子供はどこにもいない(笑)。角の隅っこにスペースを見つけたので荷物を置き、ホームの売店へお茶といなりずしを買いに行く。
戻ってみると、しゃれにならないほどの混みようとなっていた。なんとなく確保(?)しておいたつもりのスペースも、いつの間にか半分となっている。見ると、おばさんが荷物と荷物の狭間にうずくまっていた(^^;)。
「すいませんねぇ、ここに座っちゃって・・・」
「いえいえ、どうぞどうぞ(^-^)」とは言ったものの、僕自身どうやって座ったらいいか考え込んでしまうほどに隙間が無い(笑)。いちど後ろ向きの姿勢を取り、腰から順繰りに隙間へと押し込んでゆく(笑)。デッキにも人が溢れ、新たに乗り込もうとしている人たちは呆然としている。立っている人は、吊革はおろか、何にも捕まるところがない。走り出したら大変だなぁ。
奥のほうにはビデオが設置されていて、ドラえもんのアニメが陽気に流れている。辺りの人達を見渡すと、グループでは賑やかに会話が弾んでいるものの、さすがにその表情は疲れているようだった。そこに突然、大山のぶ代の声で車内放送が。
「みなさぁ〜ん、どらえもんかいていれっしゃへ、ようこそぉ〜〜(^^)/」
一同爆笑(^^;)。
走り出すと、床からおしりに直接振動が伝わってきて、けっこうつらい(^^;)。隣のおばさんは、しゃがんでいるのにも疲れたらしく途中で立ち上がり、しばらくそうしていたが蟹田で下車していった。とはいえ、居住空間はさほど広がらない。おしりが本格的にしびれてきたので寝袋のうえに座ろうとしたが、気をぬくと転がってしまう(笑)ので、カカトの裏で押さえつける。座布団がわりに寝袋を敷き、両手で膝を抱え、背を丸めてうずくまっている格好だ(^_^;)。
たびたび流れる、ドラえもんの青函トンネルに関するガイド。トンネル中間地点通過のアナウンスを最後に、記憶がとぎれてしまった。
目が覚めたとき、僕は北海道の上にいた。また来たぞ、北海道(^^)。
すでに函館到着の5分前。立ち上がろうとしたが、足がしびれて力が入らない。無理な姿勢で寝ていたからなぁ。でも気合いを入れて、乗り換えの支度をする。