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7月29日
朝方、目が覚める。たぶんまだ6時過ぎだろうか。始発までには少し時間があるはずだ。一人の小学生の男の子が待合室に入ってきた。僕を見て驚いている様子だ。
さて、これからどちら方面に進もうか・・・。荷造りをしながら考える。トムラウシやオンネトーに行こうかとも考えていたが、何しろそこへ行くにはバス代が高すぎる。ウン千円というお金を使わなければならないらしい。それは次回にまわして、もう一つのプランを実行することにする。
一番列車が下ってきた。列車の入り口で、バスと同じような整理券を抜き取る。朝日が窓に射し込む。昨日とはうって変わって軽やかなエンジン音だ。上りと下りではこうも負荷のかかり方が違うのか。買い置きしてあったポカリスエットを飲み、タバコを吸って目を覚ます。やがて列車は富良野に到着。駅前では数人のライダー達がタバコを吸ったり歯を磨いたりしていた。なんと客車を改造した無料宿泊施設があったのだ。
富良野線 富良野8:23→上富良野8:40
富良野と美瑛の間に上富良野という駅があり、そこから十勝岳へ向かうため、またラベンダー畑を見るために列車を乗り換えた。
上富良野駅にて
駅の小さな観光案内所にて資料をもらう。僕の考えでは、お昼過ぎまで近くのラベンダー畑や丘を散歩して、午後には十勝岳方面に向かうという予定だ。観光案内所のおばさんは、親切に相談に乗ってくれた。そして、僕の旅のスタイルと予算などが考慮された、とても良い宿泊施設を紹介してくれた。
「ヒュッテ白銀荘」。純粋に登山のための山小屋らしい。食事はすべて持ち込みの自炊が条件で、一泊1700円。どんなところか楽しみだ。登山までしようなどとは夢にも思っていなかった僕だが、山は元々好きなので、天気さえ良ければトレッキングしてみることにした。早速予約の電話を入れてみる。山小屋の“おとうさん”が電話に出た。駅の近くにスーパーがあることを教えてくれて、「そこで飯を買って上がってきなさい」とのこと。
良いところを教えてもらって目的も出来たので、観光案内所のおばさんにお礼を言いに戻り、更にいろいろと見所を教えてもらった。
ラベンダー園(日の出公園)
駅から十分ほど歩いたところに、ラベンダーを観光客向けに栽培している施設があるというので行ってみると、そこは公園自体が一つの丘になっていた。結構長い階段を、息せき切って登って行く。階段の左右にはラベンダー以外にも様々な花が植えられてあって綺麗だ。ちょうど富良野市主催の写真コンテストが開かれている時だったので、丘の至る所にカメラマンが立っている。頂上に着くと、それは気持ちの良い風が吹いていた。「丘」は遠目から眺めるのが一番だ。
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頂上の売店にてラベンダーアイスクリームを食べる。そしたら強烈にのどが渇いてしまったので、ウーロン茶も買い丘を下りる。展望台の麓にログハウス調の休憩所があったので休んでいくことにした。湿気のまったくない、クーラーよりも爽やかな風が入ってきて、うっとりしてしまう。しばらく日記を書いた後、持参した携帯時計のベルをセットして昼寝をする。
12時18分に起きて公園を出る。“おとうさん”に教えてもらった「フジスーパー」を目指して歩く。今夜の夕食の仕入れをする。
−購入した物−
・激安オーストラリア産牛肉
・ポン酢
・レトルトライス
・ポカリスエット
十勝岳に向かう
「フジスーパー」からほど近いバス停で、十勝岳行きのバスを待つ。13時21分の予定から5分ほど遅れてやってきた。バスは、ふた昔前の観光バスの車体をそのまま使用している。
しばらく丘陵地帯の中を走り続ける。いかにもこの辺りの代名詞的な景色だ。丘を突っ切って遥か彼方まで続いている一本道を、スーパー7(バーキン7かな?)
が走り抜けていった。こんな場所は、是非とも自分で運転して走ってみたい。または一日中ボケッと散策して過ごすのもいいかもしれない。隣に座っていた「ドラマ・北の国から」のファンの人は、この風景に憧れていたらしく、結構ハマっていた。
やがてバスは、十勝岳に向けてどんどんと高度を上げ、それにあわせて植生が変化し、景色も変わってゆく。少し残念なことに、山の上の方を見るとガスがかかってきてしまっている。晴れていれば最高なのだが・・・。それでも雲の下からのぞく山肌には雪が残っていて、険しい山であることは想像がつく。とにかく素敵なワインディングロードだ。時折、テントを積み込んだバイクがすれ違ってゆく。
白銀荘にて
ようやく山小屋「白銀荘」に着いた。漠然とイメージしていた通りの典型的な、古い木造の山小屋であった。小屋の前面にはちょっとした草地が広がり、キャンプが出来るようになっている。目前にそびえる十勝岳を改めて見上げると、斜面は岩がごろごろしているようなところが多く、硫黄臭が漂っていそうな雰囲気だ。
早速、重く厚い扉をこじ開けて中にはいる。こういう山小屋は大体がそうであるが、重油とカビと汗を混ぜたような匂いがする。狭い玄関には、先客の登山靴がびっしりと並んでいる。薄暗くギシギシと鳴る廊下を通り、食堂兼台所に出る。
おとうさん(山小屋の主人)が出てきたので挨拶をして宿泊代を先に払う。風呂(温泉)の入り方や消灯時間を教えてもらい、地図をくれて、住まいとなっている奥の部屋に戻っていった。
荷物を置くために階段を上がる。寝室は上下2段に分かれて、ずらっと布団が敷かれているドミトリーのような形式だ。低い天井には裸電球がぶら下がっている。どこで寝たって良いのだが、とりあえず隅のほうに荷物を置いた。
下に戻ると、連泊している登山客が何人かいたので挨拶を交わし、ひと息ついたところで何をしようか考える。近場でどこか良いところはないのか?。聞いてみると、富良野岳を少し登ったところに開けた場所があり、自然のお花畑が広がっているとの事。明日早朝、天気が良ければ4時頃出ても健脚往復で 時過ぎには戻れるらしい。それに望みをかけて今日の山登りは諦める。
温泉「吹き上げの湯」
すると、札幌から来たという登山客が露天風呂の存在を教えてくれた。ここから歩いてちょっとの所にあるという。願ってもないことである。温泉を目指して歩き出す。しばらくすると、道の向こうからも老年夫婦の二人連れが歩いてきた。すれ違ったところで声をかけられた。
「ここら辺に、りえちゃんの露天風呂があるっていうんで来たんですけど、知っていますか? 」
“りえちゃん”というのが、この時の僕には意味不明だったのだが、とりあえず3人で温泉を目指すことになった。しばらく一緒に歩いてゆくと、道の先にキタキツネを発見。おばさん凄く嬉しそう。早速餌になるようなものを旦那のリュックからほじくり出している。餌は与えないほうがいいのだが(^_^;)。
さすがは野生のキツネ、最初は僕達が近づくと山の中に逃げようとしたが、それでもおばさんが遠くへ放り投げたイカの切り身に気がつくと、足を止めて振り返った。2つほど投げてみて様子をうかがう。しばらく僕達のほうを見ていたが、近づいてそそくさと食べ始め、山の中へ消えていった。
やがて道を右に折れて林の中を下っていくと、木と木の間から温泉「吹き上げの湯」が見えてきた。地元の人に交じって、バイクのライダーや登山客らしき人もかなりいる。温泉の横には川が流れていて、そこからも濛々と湯気が上がっている。入浴料なんてもちろん無い。
服を脱いで手頃な石の上に衣類を置き、湯に浸かる。気分は最高、至高の極み。となりで浸かっている人が教えてくれたのだが、ちょっと前にドラマの撮影で宮沢りえがここに来て、一風呂浴びていったそうなのだ。その為ここは少し有名になったらしい。また、りえちゃんが出た後、真っ先に入った男が、お湯を飲みまくっていたらしい(笑)。
再び白銀荘にて
頭は洗えなかったものの、さっぱりすることが出来たので、ほっとした気分で小屋に戻る。着いてみると、既に何人かのグループは夕飯の準備を始めていた。僕も腹が減っていたので準備を始めることにする。
メニューは激安牛肉のステーキポン酢ソース(?)だ。フライパンを借り肉を焼き、フライパンごとテーブルに持ってきて食べる。空腹だったので、なんだかわからぬがうまかった。
食事が済むとやることが無くなったので本でも読もうかと考えているうちに、隣に座っていたグループが宴会を始めだした。そしていつの間にか僕も交じって一緒にお酒を飲んでいた(笑)。
酔っぱらいかけていたところに風呂の順番が回ってきた。薄暗い廊下を抜けて浴室の扉を開けると、湯気でメガネが曇り、しばらく中が見えない。浴槽からはものすごい勢いで温泉があふれ出ている。風呂場には特に重油のような匂いが立ちこめている。木の腐敗を防止するために防腐剤を塗り込んであるのだろう。昔の電柱とか鉄道の枕木などもそうだったように思う。ただ、床の渡し板も例外ではないので、足の裏がどうしても油っぽくなるのには困ってしまった。
石鹸を使って頭と体を洗う。やはり夏なので最初は泡が立たなかった。床に流れるかけ湯にも泡は立っていなく、代わりに垢らしき物が排水溝の近くに被膜を作っていた(笑)。
風呂から出てポカリスエットを一缶飲み干し、小屋の外に出てみる。ひんやりとここち良い気温だ。これで星が出ていたら最高なんだが・・・。タバコを1本吸ってから部屋に戻った。中は結構蒸し暑かった。
眠くなってきたので二階に上がる。家を出発してから蒲団に寝るのは初めてなので少し感動する。蒲団はとても柔らかく、正に人間を眠りに誘うのにちょうど良く作られている。だから、あっと言う間に寝てしまった。