8月9〜10日
独りの食事
目覚めると外は真っ暗になっていた。お腹が減ったな、夕食にするか。・・といってもカップラーメンだけど(^_^;
札幌のコンビニで買っておいたのだ。
きしむ廊下を抜けて炊事場へ。お湯を沸かせばそれで終わりだ。もう少し料理らしい料理が可能な食材を買ってくれば良かったと少々後悔。こういう所では、食事を作るのだってそれなりに楽しいからね、独りでも・・。
カップラーメンに“かやく”を入れた後、やかんを探していたところ、コンロの前で湯を沸かしていた中年のおばさんが声を掛けてきた。
「よかったら、残りのお湯を使って下さい」
「ありがとうございます」(^^ゞ
調理場の横には広い食堂があって、お湯をくれたおばさんの家族が、部屋の中程で食事をしている。僕は隅のテーブルに座り、麺がほぐれるのを待つ。
新館の方はそれなりにお客がいて活気があるけれど、どうやら旧館には僕とこの一家族しかいないようだった。改築前は賑わっていたであろうこの食堂も、主役を取られた今はスペースを持て余している。静かな夕食だ。
ふと思った。人が僕のことを見たら、どういう風に映るのだろう。寂しそうに、つまらなそうに見えるのだろうか?。
でも全然寂しくは無かった。むしろ、
“僕がここに来ていることを、今は誰も知らない”
不思議とそう想うだけで、何かから解放されたような、リラックスした気分を味わえていた。
先ほどの女性が、手にスイカを持ってテーブルへ近づいてくる。
「よかったら、食べますか?」(^^)
「ありがとうございます、いただきます」(^^)
カップラーメンを平らげて、最後にゆっくりとスイカを味わった。甘くて冷えたスイカは、カップラーメンの数倍も美味しかった。
満天の夜空
脱衣場の扉を開けると明かりは灯されておらず、真っ暗だった。懐中電灯が必要なくらいかもしれない。
誰もいない、畳六畳ほどの湯船には湯があふれ、夜空の星を映しながら、ユラユラと揺れている。
素晴らしい演出だ。最高だな。
遠慮なく足をのばしてリラックス。空には、笑っちゃう位の数の星がきらめいていた。都心では絶対見ることが不可能な、本来の夜空だ。星ってこんなに存在感があったんだ・・。忘れていたよ。僕は相当罪な場所に住んでいるんだなぁ。
首が痛くなるまでひたすらに星を眺める。どんどん吸い込まれてゆくぞ!ガキの頃、田舎の道ばたで寝ころびながら星を見続け、そのうち言葉では表現できないような、強烈に不思議な気持ちに陥ったことを思い出した。此処はやっぱり宇宙の一部なんだ。
なんだか胸がキュンとなるなぁ。
「がちゃ」
脱衣場の扉が開く音。
ありゃりゃ、カップルが入って来ちゃった(*^^*;)
用意の良い彼氏だ、ちゃんと懐中電灯で足下を照らし、彼女をエスコートしている(笑)
「ちゃぽん」
再び、湯の跳ねる音が聞こえるだけとなり、三人はしばらくの間、湯船の中から星を無言で見続けた。ぽかんと口を開けながら。
うん、よかった堪能した、さて出よう。“二人の為だけの”温泉と、星空をプレゼントしてあげる気持ちになったのだ。(^-^)
まだ部屋には戻らずに、“仙人風呂”へとはしご。
昔ながらの、湯治場的な面影を残す佇まい。仙人風呂という名前がしっくり当てはまる。ここは内湯だけであり、他の二つの風呂に比べると地味だが、なかなか趣があって僕は気に入った。僕の前には誰も入浴した形跡が無く、ゆっくりと身体と気持ちを休めることが出来た。
こちらの湯は比較的透明である。しかし湯を舐めてみると酸っぱくて、口に含めてみたら歯の表面の滑らかさが失われてゆく気がした(笑)。
湯船の中であぐらをかいて、疲れのたまった両足をゆっくりマッサージしながら明日のことを考えた。
部屋に戻り、押入から布団を引っぱり出す。今までの疲れと睡魔が一気に押し寄せていた。携帯時計の目覚ましをセットして、ひっくり返るように布団へ。
背伸びを一回した後、瞬間的に眠りにつく。