8月11〜12日



 旅は道連れ

27本目の列車 834D(村上行) 
酒田19:59-村上22:22

乗車時間 2時間23分

先ほど座席を譲ってあげた女の子とホームで喋りながら列車を待ち、やがて来た新潟色の気動車に乗り込む。今度は比較的空いていて、クロスシートでゆっくりとくつろぎながら話が出来た。道中で知り合った人と話しをするのはとっても楽しい。旅はやっぱりこうじゃなくちゃね。

彼女は北見の大学に通う学生で、4月から北海道にいるらしい。特にこの学校を狙っていたわけでは無かったらしいのだが、結果的に北海道にハマっているとのこと。良いことだ(笑)。一番楽しい時だろうなと思う。東京の学校で、下らない遊びを覚えるよりずっと良い。ちょっと羨ましかったりする(笑)。今回、青春18キップを使って実家のある兵庫まで戻るところだという(^^)。

彼女にとって興味のある事柄や、将来の夢などをいろいろ聞いてみた。
山の番組があればつい見てしまうらしい。星が好きで、行ってみたいところはスイス。山小屋の番人になりたいとも言っていた。むむ!。僕と興味の抱き方が似ているぞ(笑)。将来、本格的に山好きとなる気配が濃厚だ。北海道の農家でアルバイトもしてみるつもりだと彼女は言う。んんん〜、僕もしてみたいな〜(笑)。いろんな体験をしてみるべきだと思う。

28本目の列車 3948M(快速ムーンライト越後新宿行)
村上22:31-新発田22:58

乗車時間 27分

長距離夜行快速列車、ムーンライト越後。これに乗れば、明日の朝には新宿に到着する。

しかしまだ東京へは戻らずに、新潟の新発田に寄ってゆくつもりであった。ちょっとした縁で、立ち寄ってみたい場所があるからだ。しかし意思とは裏腹に身体が相当疲労していたので、このまま新宿まで向かってしまおうかな?とも考え始めていた。
ムーンライト越後は、新潟から新宿までの区間は全車指定席となる。下車するつもりの新発田へは指定無しでも乗れるのだが、新宿まで乗り通すための指定券は持っていない。

(駄目もとで)座席指定のキャンセル空きがあるかどうか、また客室ではなくデッキに居ることで乗車が続けられるか否かを、車掌さんに確かめに行った。ところが、新潟からは別の車掌と交代してしまうため、詳細については全く判らないと言う返答が。

指定を取って座っている彼女の席へゆき、別れの挨拶をする。隣には図体の大きい男性が座っていて、少々苦しそうだ(^^;)。
新発田駅に到着。夜更けのホームへ独り降り立つ。麦わら帽子を被った女性がホーム階段を登ってきて、電車に駆け込むと同時に扉は閉められた。

車窓から、彼女が手を振っているのが見えた。手を振り返して見送る僕。

ムーンライトは漆黒の中に消えていった。


この旅いちばんハードな夜

駅員に聞いてみる。

「駅は閉まってしまうのですか?」

駅で寝ても良いですか?とは、さすがに聞けない僕(^_^;)

「午前1時過ぎに到着の列車の後は、全て閉めてしまうんです」

(そうだよな〜^_^;)

「すみませんねぇ・・・・」

すみません・・か。そう付け加えてくれただけで、ちょっと嬉しい気がするなぁ
(^-^)
(^-^;)でも泊まれないんだよなぁ、駅には(笑)

新発田駅前では全く寝る気がしない。北海道にいた時のように、(いざとなったら何処でも寝られるさ!)と開き直る気持ちが沸いてこない。そんな妙なことから、ここが北海道ではないことを実感したのだった。

新発田駅前はロータリーとなっていて、その先には商店街が真っ直ぐに延びている。しかし人の気配は無い。お店も全て閉まっていて、シンと静まり返っている。ロータリーの横には交番があり、パトカーが一台められていた。

場違いに大きなリュックを背負い、ひとり佇む僕。
ああ、どこで寝ればいいのかな、皆目見当が付かないよ・・・。

蒸し暑い深夜。人気のない、地方の街。深夜営業をしているコンビニは一軒も見つけることが出来なかった。知らない道をあてもなく、とぼとぼと歩き出す。10分ほど歩いていると、住宅街の真ん中に公園を発見した。身体は最高潮に疲れていた。さらに寝床を探す気力も失せており、フラフラと公園の中に入ってゆく。

公園の中程にベンチがあったので、そこで寝ようと考えた。辺りは最近建てられたような民家ばっかりで、全く落ち着かない。公園の向こう側に、エスティマがハザードを出しながら停まっている。黄色い光の点滅が眩しい。その横では、男女が何かを喋りながらふざけあっている。でもその声は遠すぎて聞き取れない。
ああ、落ち着かない・・・・でも睡魔が襲ってきている。もう限界に近いかな。

ふと我に返る。
僕、こんな所で何をやっているんだろうか。

ベンチが芝生の上にあるので、蚊取り線香をつけるわけにもいかなかった。風呂に入りたい。身体がベタベタしていて、頭もかゆい。寝袋をほどいてベンチに敷き、村上駅のキヨスクで買ったパンと牛乳をリュックから取り出してみる。でも食欲が沸かない。

ここは北海道の山奥ではないのだ。かといって、都会の中の公園でもない。誰かに見られたらどうしよう。相当怪しまれるだろうな〜。一歩間違えると、浮浪者と変わらないもんなぁ、これでは・・。もし警官がパトロールにでも来れば、100%の確率で職務質問されるだろうな。いやいや、すでに近所の人が僕を見つけて、警察へ通報しているかもしれない。

『変な人がいます、気味が悪いので何とかして下さい』って(笑)。

プゥ〜ン。

耳元を蚊が飛び回る(笑)。あれ?、どこかにとまったみたいだな。気休めに虫除けスプレーを身体に吹き付けた。ただでさえ自分の汗で気持ち悪いのに、これ以上肌がべたつくのは苦痛だな。でも蚊に刺されるよりはましか。

結局、パンは2〜3切れを口にしただけで、残りはリュックの中に戻した。明日、太陽が昇ったら食べようと思ったのだ。今は寝るしかないのだ!。寝よう。明日になれば元気も出るさ・・。

ベンチに仰向けとなり、目をつぶった。瞬間的に意識が遠のいていった。



ぴちゃん!

顔の上に水が降ってきて、それで目が覚めた。雨だ・・・。

腕時計を見ると午前3時。ああついていない。辛い、眠すぎるぅ〜。リュックを開いて折り畳み傘を取り出そうしたが、いくら探しても見つからなかった。入れ忘れたのかなぁ。
もう、どうでいいや。

小雨の降りしきる中を、駅に向かって再び歩き出し、線路を隔てた反対側まで出てみた。どこかに、屋根の付いた公園は無いかなぁ・・・。

駅周辺をウロウロと歩き回っていて気が付いた事がある。いわゆる宗教団体の施設が多いのだ。(寂しい人、疲れた人がいっぱいいるんだろうなぁ・・)。老人が多く暮らす、このような地方の街では、心のよりどころを宗教に求めてしまう人が意外に多いのかもしれない。

アスファルトの道は雨に濡れ、街灯の明かりに照らされて光っている。異様に湿度が高く、歩いているだけで汗が滲み出る。Tシャツが濡れているのは、雨と汗の両方だ。

踏切を渡って、線路伝いに歩いてゆくと、使われなくなった引き込み線の横に、背の高い屋根付きの駐車場が見えてきた。吸い寄せられるようにそこへ向う。
以前は、貨物列車に乗せる物資を置いておくための場所だったのだろう。駐車場の前には雑草が生い茂り、その中には線路が埋もれていた。線路敷地内に設けられた水銀灯の明かりで、辺りは寂しく照らしだされている。

ヘナヘナと座り込む。
「もうだめだ〜(;;)
「はぁ〜・・・(x_x)

敷地内に駐車されている車はまばらだ。もしここで眠り込んで、バックしてきた車にひき殺されたらどうしよう・・・なんて事も少し考えたが、殆どどうでも良くなっていた。

遠くで弱々しく光る、緑色の水銀灯をぼんやり見ながら、地べたの上に寝転がる。なんとなく悲しい気分になってきた。今頃ムーンライト越後はどの辺りを走っているのかな? 僕はこんな所で、何をやっているのだろう?。

・・誰かの足音が聞こえる。駐車場へと向かってくるぞ。

『なにやってんだ?こんな所で?』

おじさんが僕の顔をのぞき込んだ。事情?を簡単に説明すると、「ここに車は入ってこないから大丈夫だ」と一言残し、4tロングの運転席によじ登ると、慣れた感じで切り返しをして駐車場を出ていった。

時計の針は4時半を指していた。